投稿の詳細: 「犬の餓死」という芸術

2011/01/24

永続的リンク 16:19:13, カテゴリ: ちょっと考える

「犬の餓死」という芸術

ある芸術家が餓死寸前の犬を展示して「犬の餓死」という芸術を発表した。
しかもこれはまだ最初の布石に過ぎず、私が表現しようとする
芸術の準備段階だと宣言した。

「犬の餓死」だけでも非人道的なのに、それが準備段階に過ぎないと
宣言したことで、様々な人から非難が集中した。
ネットでは芸術家のブログは炎上し、自宅には反対するグループが
押し寄せ、それらをマスコミが取り上げ更に盛り上がり、収拾が
つかない程に社会問題化した。

それを受けて芸術家は新たなコメントをした。

次の展示に使う犬は保健所で処分される予定の犬を使用することにします。
助けたい人がいらしたらどうぞご自由に。

次の展示が行われる日、展示される美術館では初めて開館前に
行列ができていた。

鉢巻をして襷をかけたいかにも抗議団体ですという集団や、
興味本位で初めて美術館に訪れましたというような一般人、
そしてそれらを面白可笑しく撮ろうする撮影人。

100人以上の人が集まっていたので美術館はいつもより早く開館した。
開館するや否や、皆早足で「犬の餓死」が展示されている前に集まった。
前回と同じように動く元気もないような犬が元気なく伏せっていたが、
そこに立ててあった看板だけは前回と違った。

「助けたい人がいらしたらどうぞご自由に。」

展示の前に集まった皆が静かに周りを伺う。
多くの人が降りる停留所なのに停車ボタンを皆なかなか押さない
バスの空気に似ていた。
そんな中一人の老婦人が静々と手を挙げた。
この犬を引き受けたいのですが。
すると奥から芸術家が現れてわかりましたと犬の縄を看板から解き、
老婦人へと手渡し、また奥へと下がっていった。
縄を受け取った老婦人が屈み「もう大丈夫よ。」と犬の頭を撫でると
自然に拍手が巻き起こった。

しかしそんな中、芸術家は奥から飄々と現れ、また連れてきた犬を
看板に繋いだ。
どういうことだと詰め寄られるが特に気にすることもなく、
今日は10匹連れてきましたから後9匹いますよ、と答えた。
人々は唖然としたが一度できた流れは変わらず、次々と挙手する人が現れた。
自分が引き受ける、いいや自分が引き受けると、我先にと手を挙げた。
芸術家は機械的に受け渡しを9回済まし、その日の展示は終了した。
マスコミはその様子を何度も放映し、国民もその美談に酔いしれた。

芸術家はその後も精力的に展示を行ったが「犬の餓死」が完成することは
なかった。

どこの美術館でも用意した犬は全て貰い手が現れたからだ。
それは数を増やしても変わらなかった。
展示の度に生成され続ける美談が一大ブームを作っていたからだ。
そしていつしかある噂が囁かれていた。
あの芸術家は処分予定の犬達を救うためにこんな展示を
始めたんじゃないだろうかと。

しかしある時、芸術家は突然展示をやめた。
ブームの最中だったから人々は不思議がった。
そしてとある記者が尋ねた。
「噂では処分予定の犬を救うためにこの展示をしていたとのこと
ですが本当でしょうか?」芸術家は答えた。

「いいえ違います。それに、もしそれが目的ならば展示をやめる
なんておかしいでしょ?」もっともな話だった。

「では何のために展示をして、そして何故展示をやめられるの
ですか?」

芸術家は答えた。
「それはこれからわかります。
そして私の準備はこれで終わったので展示をやめます。
どうぞ皆様これから行われる出来事をお楽しみください。」

展示は終わった。

謎めいた発言は一時的に話題にはなったものの、その後も特に
何かが起こるわけでもなかったので、すぐに忘れ去られた。

そして数ヶ月後。
奇妙な現象が起こり始めた。
全国各地の公園などに痩せ衰えた犬が次々と放置され始めたのだ。

「助けたい人がいたらご自由に。」と書かれた言葉と共に。

引き受けたはいいものの、流行と偽善の気持ちから挙手した人が
殆どで、数ヶ月もする頃には飼うことが嫌になっていた。
どうしたものかと考えつく先は皆同じで、それが芸術家と同じような
手段だった。
直接捨てたり保健所に連れて行くよりも心が痛まない。
悪いのは助けることができたのに、助けることなく見ていたやつだと。

かくして「犬の餓死」は完成した。

多くの人の手によって。

[続き:]


***感想
もちろんフィクションでござーますよ。
すごい良い話ですねーよく出来てる。

人の偽善心の薄っぺらさと、自己愛について詰め込まれてるよね。
ここで芸術性について話している人とは仲良くなれないと思う。
どう読んでも芸術とはなにか、って話ではない。
少しは表現の自由についても練りこまれているかもしれないけど、それ以上に大事なのは人間の心の動きだと思う。

偽善の運動といえば最近ブームになった伊達運動に通じるものが有ると思う。
結局、あれは自分が上だと思っている人間が見下してる相手に"寄付"して自己満足に浸る非常に嫌な運動だと思った。
一番最初にやった人は違うと思う。今の世に嫌気がさして、少しでも幸せを、っていう純粋な気持ちからだと思う。

勿論、寄付自体はすごく良い事だし、やらぬ善よりやる偽善とはよく言ったものだとも思う。
だけど、ならば現金を渡したらどうかと思う。
物を買って、贈りつけることがどうも偽善の塊に思えて仕方ない。
勿論、安いものじゃない。安いものじゃないからこそ、現金で渡す方がいいと思う。

施設の子供に必要なもの、本当に欲しがってるものが100%分かってそれを買うなら良いけれどそうじゃないと、せっかく大枚をはたいてもトンチンカンな贈り物になるような気がする。
どうせなら、子供は100%欲しいものを貰いたいと思うんじゃないかな。

施設関係の人も、一部で複雑な声をあげているみたいだしさ。
まぁ、もうブーム終わったのかもしれないけど。

あとキャラ名使えば良いってものじゃないと思う。
自分の好きな漫画のキャラの名を使うって事は、大好きな作家さんのキャラを黙って借りるのと一緒ではないかと。
一番最初の伊達は良いけどね。

おっと脱線した。
動物スキーな私ですが、これ読んでも何も感じなかったんだよね。
「可哀想!」とか思わなかった。
文が綺麗過ぎて、現実と線引きしたからってのもあるけどそれ以上に、この芸術家が展示をしてもしなくとも犬は死ぬって考えが根っこにあるからかな。
毎日保健所で大量に殺されてるもの。
人間ってのは、本当に不思議なもので保健所で大量処分される動物に対しては目を塞ぎ
小さな問題、また大きく取り上げられた問題にだけ目を向ける志向がある、よね。

最後の最後で、芸術作品をつくりあげたのは偽善から救いの手を伸ばした人間達であって、それは非常に滑稽なものだと思う。滑稽意外に言いようがない。
非常に面白い話だと思う。本当に好きだ、こういう話。

そうだ、人物の不思議展でも最近問題になったね。
無許可で展示を行ったんじゃないか、とかいう話だったっけ。

いやね、今更馬鹿じゃないのって思うわけですよ。

元から黒い噂は有ったじゃない。
あんな状態の良い胎児、どこから持ってくるんだろうとか普通に見て疑問がわくよね。
もうなんか今更…

色んな人の日記見てると、色々有って面白かったけどね。
「本物の死体だから面白いのに。」とか「家族の遺体が無許可で使われたら…と思うと」とか。

わたしも一度、学校の関係で行きましたが胎児に驚きました。
よくあれだけの数集めたな~…。そんな感じです。

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